【解説】ISO/IEC 42001の管理目標と管理策の概要
2025年12月19日 生成AIにより原案作成
東京都 校正
はじめに
ISO/IEC 42001(AIマネジメントシステム:AIMS)は、組織がAIを責任を持って開発・提供・利用するための国際規格です。この規格の核となる「附属書A」には、AI特有のリスクを管理するための10の管理目標(カテゴリー)と、それに紐づく38の管理策が定義されています。
本文
ISO/IEC 42001の38の管理策は、AIのライフサイクル全体をカバーする以下の10のカテゴリーに分類されます。
1. AIに関する方針 (A.2)
組織がAIをどのように活用し、どのような倫理観を持つべきかの「憲法」を定めます。
- 管理目標: AIの適切な利用と管理に関する組織的な方向性と指針を示す。
- A.2.1 AI方針: 組織全体のAI活用に関する基本方針を策定し、全従業員に周知する。
- A.2.2 AI方針のレビュー: 社会情勢や技術、法規制の変化に合わせて、方針を定期的に見直す。
2. 内部組織 (A.3)
AIを適切に管理するための責任体制とガバナンスを構築します。- 管理目標: AIに関する役割と責任を明確に割り当て、組織的に対応する。
- A.3.1 AIの役割と責任: 開発、運用、監視などの各フェーズで誰が責任を持つかを明確に定める。
- A.3.2 報告ライン: AIに関連する問題やリスク、倫理的懸念が発生した際の報告ルートを確立する。
3. AIシステムの資源 (A.4)
AIのライフサイクルを支えるために必要なリソースを適切に管理します。- 管理目標: 必要な人材、データ、計算資源を適切に確保し、維持する。
- A.4.1 人的人源: AIの専門知識を持つ人材の確保と、スキル向上のための教育を行う。
- A.4.2 データ資源: 学習や検証に使うデータの品質、量、入手方法が適切かを確認・管理する。
- A.4.3 計算資源: CPU/GPU、クラウド環境など、AIの動作に必要なインフラを計画的に確保する。
4. AIシステムの影響評価 (A.5)
AIが社会、個人、環境に及ぼす潜在的な影響を分析します。- 管理目標: AIのリスクを事前に特定し、不利益な影響を最小化する。
- A.5.1 影響評価プロセス: 影響評価をいつ、誰が、どのように実施するかの標準手順を決める。
- A.5.2 影響評価の実施: 個別のAI案件ごとに、人権、プライバシー、社会への影響を具体的に評価する。
- A.5.3 影響評価の記録: 評価のプロセスと結果をエビデンスとして記録し、適切に保管する。
5. AIシステムのライフサイクル (A.6)
企画から開発、運用、廃棄までの各段階で品質と安全性を確保します。- 管理目標: AIの各段階において一貫した管理を行い、信頼性を保証する。
- A.6.1 ライフサイクルプロセスの管理: 企画から廃棄までの各工程における標準的なルールを定める。
- A.6.2 目標の策定: 精度、堅牢性、安全性など、AIシステムが達成すべき具体的な目標を定義する。
- A.6.3 設計と開発: セキュリティや公平性を初期段階から考慮した設計(By Design)を行う。
- A.6.4 検証と妥当性確認: AIが意図通りに動くか、バイアスやエラーがないかを厳格にテストする。
- A.6.5 展開(リリース): 本番環境への導入手順、承認プロセス、切り戻し手順を確立する。
- A.6.6 運用と監視: 稼働中のAIの挙動をモニタリングし、ドリフト(精度低下)や異常を検知する。
- A.6.7 変更管理: AIを更新・修正する際の影響評価と、安全なアップデート手順を定める。
- A.6.8 廃棄: 利用終了時に、データやモデルを安全に消去し、システムを停止させる。
6. データと情報 (A.7)
AIの精度と信頼性の源泉である「データ」を厳格に管理します。- 管理目標: 信頼できるデータを活用し、情報の機密性と整合性を守る。
- A.7.1 データの取得: 著作権や個人情報保護法に抵触しない適正な方法でデータを収集する。
- A.7.2 データの準備: 学習用データのクリーニング、アノテーション(ラベル付け)を適切に行う。
- A.7.3 データの品質: データが正確、完全、最新であり、AIの目的に合致しているかを保証する。
- A.7.4 データのバイアス: 不当な差別に繋がるようなデータの偏りを検出し、軽減対策を講じる。
- A.7.5 データの機密性: 学習データや出力結果(機密情報を含む場合)の漏洩を防止する。
- A.7.6 データの出所管理: データの由来(データリネージ)を記録し、追跡可能にする。
7. 利用者への情報提供 (A.8)
AIの透明性を高め、利用者との信頼関係を築きます。- 管理目標: AIシステムの特性を明示し、利用者の適切な理解を助ける。
- A.8.1 利用者への説明: AIによる判定であることや、その仕組み、意図を分かりやすく伝える。
- A.8.2 説明可能性: なぜAIがその判断を下したのか、人間が納得できる根拠を提示可能にする。
- A.8.3 情報の提供: 利用ガイドラインや制限事項、想定されるリスクを適切に開示する。
8. AIシステムの利用 (A.9)
他社から提供されるAIツールやサービスを利用する際のリスクを管理します。- 管理目標: 外部提供のAIによるリスクを自社の管理基準に適合させる。
- A.9.1 外部AIシステムの利用方針: 社外のAIツールを選定・利用する際の基準や許可ルールを定める。
- A.9.2 供給者(ベンダー)の評価: 信頼できる提供者かどうか、セキュリティや倫理面から審査する。
- A.9.3 供給者との合意: 責任分担、データの取り扱い、品質維持について契約を締結する。
- A.9.4 外部AIシステムの監視: 導入後も継続的に外部ツールの安全性や稼働状況をチェックする。
9. 関係者とのコミュニケーション (A.10)
社会的な説明責任を果たし、ステークホルダーとの信頼を維持します。- 管理目標: ステークホルダー(顧客、当局等)との適切な情報共有を行う。
- A.10.1 外部への報告: 事故や重大な不具合が起きた際の外部公表の手順を確立する。
- A.10.2 利害関係者との対話: 顧客や一般市民からの懸念や苦情に対し、誠実に対応する。
- A.10.3 インシデントの通知: 深刻な問題発生時、被害を受ける可能性がある者に速やかに知らせる。
10. 改善 (A.11)
PDCAサイクルを通じて、AIマネジメントを継続的に進化させます。- 管理目標: システムの有効性を高め、常に最適な管理状態を維持する。
- A.11.1 不適合と是正処置: 問題発生時に原因を究明し、再発を防ぐための抜本的対策を講じる。
- A.11.2 継続的改善: 管理体制全体を定期的に評価し、より高度なものへブラッシュアップする。
- A.11.3 AIシステムの再学習: 環境変化により精度が落ちた際、適切な再学習プロセスを実行する。
- A.11.4 モニタリング結果の活用: 日々の監視データを分析し、将来のリスク予防や改善に役立てる。
まとめ
ISO/IEC 42001の38の管理策は、AIを「単なるソフトウェア」としてではなく、 **「社会的な責任を伴う動的な資産」** として管理するための包括的な指針です。 これらをすべて導入することは一見大変に思えますが、組織の状況(AIを自社開発するのか、既製品を利用するだけか)に合わせて、どの管理策を重点的に適用するかを選択する「適用宣言書(SoA)」を作成することが、この規格運用の第一歩となります。 今回の38項目の中で、特に貴組織で優先的に検討したい項目(例:データのバイアス対策や外部ベンダー管理など)はありますか?より詳細な実施手順の作成をサポートすることも可能です。引用文献
- ISO/IEC 42001:2023 Information technology -- Artificial intelligence -- Management system
- https://www.iso.org/standard/81230.html
- 日本規格協会(JSA) ISO/IEC 42001:2023 規格解説
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/dev/iso_iec_42001/ - 一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) AIマネジメントシステムの最新動向
- https://www.jipdec.or.jp/project/ai.html
- 経済産業省 AIガバナンス・ガイドライン(第1.1版)
- https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html
- 経済産業省 AI事業者ガイドライン
- https://www.meti.go.jp/shingikai/monoinfoservice/aishakaijisso/20240419_report.html
